2ntブログ

2013年10月

砂跡


いつだったか
きっと素っ頓狂なことを申し上げたせいで
わざわざ主がおっしゃってくださったことがある。

「私がサディストだとわかって言っているのか?」

サディストなんて、知らない
マゾヒストのことも知らない。

ただあなたの放つ衝動に、
仮初めに向けられる欲望に
奥底から引きずり出されるように
魅せられ、憧れ、欲してしまうのです。


思い描くたび
湛えるその白さ。
一瞬でホワイトアウトして
はじめから存在しなかったかの如く。

あなたは降り積もった新雪のよう。
お目にかかる刹那、かたちを保つこともなく
一切を残さない。


円網


背後から耳朶にふれるかと思うほどに
近く迫る主のくちびるが低く囁く。
「知っているぞ」
決して深い意味はなかったのに
すべて見透かされているのだと
思わずその場にへたり込みそうになった。


ただ主の一瞥で膝を折り、頭を垂れ
頭蓋がみしとたてる音をきく。
瞬時に潤む裂け目は
脚の間から透明な糸をめぐらす。

搦め捕られるのは、だれ。