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いつだったか
きっと素っ頓狂なことを申し上げたせいで
わざわざ主がおっしゃってくださったことがある。
「私がサディストだとわかって言っているのか?」
サディストなんて、知らない
マゾヒストのことも知らない。
ただあなたの放つ衝動に、
仮初めに向けられる欲望に
奥底から引きずり出されるように
魅せられ、憧れ、欲してしまうのです。
思い描くたび
湛えるその白さ。
一瞬でホワイトアウトして
はじめから存在しなかったかの如く。
あなたは降り積もった新雪のよう。
お目にかかる刹那、かたちを保つこともなく
一切を残さない。
背後から耳朶にふれるかと思うほどに
近く迫る主のくちびるが低く囁く。
「知っているぞ」
決して深い意味はなかったのに
すべて見透かされているのだと
思わずその場にへたり込みそうになった。
ただ主の一瞥で膝を折り、頭を垂れ
頭蓋がみしとたてる音をきく。
瞬時に潤む裂け目は
脚の間から透明な糸をめぐらす。
搦め捕られるのは、だれ。